本年度は Gauss 求積法を用いた新しいテンソルネットワーク形式を 2 次元複素スカラー理論に適用する研究を行なった.この模型は有限密度領域で深刻な複素位相問題を抱えているが,本研究ではその領域での数値的検証を行なった.具体的には,熱力学極限下で Silver Blaze 現象と呼ばれる振る舞いを複数の物理量に対して定量的に再現した.また,この模型はキャラクター展開を用いて複素位相問題の起こらない形式に変形することが可能であるが,本研究では,a) 模型を直接テンソルネットワーク化した場合,b) 複素位相問題の起こらない変形を施した上でテンソルネットワーク化した場合,の 2 つの場合について物理量を計算し,両者の間に差がないことを示した.このことは,Boltzmann 因子の複素位相がテンソルネットワーク計算の精度に影響しないことを示している.以上の成果により,非コンパクトな複成分自由度を持つ模型や深刻な複素位相問題を持つ模型でも新しいテンソルネットワーク形式とテンソルくりこみ群の有効性が確かめられたといえる.
|