孤立した星形成領域B335で明らかにしてきた、Hot Corino化学とWCCCを併せ持つハイブリッドタイプの化学組成が、他の星形成領域でも見られるかについて焦点を当て研究を行なった。具体的には、CB68のALMAのデータとCB244のNOEMAの観測データの解析を行なった。CB68では、B335と似たようなハイブリッドタイプの化学組成が検出され、CB244ではWCCCの化学組成のみが検出された。このことは、他の原始星からの影響が排除できると考えられる孤立分子雲の中でも、化学的多様性が生じることを示唆する。さらに、孤立天体の分子雲の形状と比べると、B335とCB68では比較的対称な構造をもつのに対し、CB244では星なしコアを伴う非対称な構造をもつ。このような分子雲の違いとともに、原始星周りの物理構造についてもB335・CB68とCB244の間で異なる可能性があることがわかった。B335とCB68では上限値でみて数十天文単位程度の小さな回転構造をもつのに対し、CB244での回転構造の上限は数百天文単位と大きく異なる。これらの結果から、分子雲の形状や原始星周りの物理構造が化学組成と関連している可能性が考えられる。このような関連性がみえてきたことは、孤立天体のみ抽出して研究を行なった最大の成果である。これらの結果を博士論文としてまとめた。さらにCB68・CB244の結果については、現在主著論文として投稿準備中である。
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