高エネルギーハドロン反応で観測されるシングルスピン非対称(SSA)の一種である横偏極ハイペロン生成現象に関する研究を行った.SSAはハドロン内部でのパートン間多体相間を反映した現象であることが知られており,本現象の解明によりその背後にあるQCDダイナミクスの理解が期待される.SSAはQCDを厳密に用いたツイスト3機構によって記述可能であり,私は横偏極ハイペロン生成過程に関し微分断面積の定式化を目指した. 横偏極ハイペロン生成現象として,本研究では半包含無偏極電子-核子衝突過程(SIDIS過程)及び無偏極核子核子衝突過程を扱い,終状態ハイペロンへの破砕に関するパートン多体相間効果の寄与に着目した.この多体相間効果はクォーク・グルーオン相関及び純粋なグルーオン相関の2種類があり,それぞれ対応するツイスト3破砕関数の寄与として断面積中に現れる.本研究では上記2過程について,ツイスト3グルーオン破砕関数の寄与する断面積公式の導出を行った. 始めにカラーSU(3)群の構造定数を考慮したグルーオン破砕関数の定義付けを行い,それらを組み込んだ断面積の定式化を行った.次に導出公式内の具体的なハード断面積の計算を,本過程に表れる全パートン間チャンネルに関して実行した.またツイスト3グルーオン破砕関数間には,QCDの運動方程式やローレンツ不変性からの制限により2種の関係式が成立する.この関係式を導き出し断面積公式へ適用することで,破砕関数の完全形でPP過程及びSIDIS過程の断面積を記述した.これにより,最終的な断面積公式をフレーム不変かつゲージ不変性を満たす形で導出した. 以上の研究成果により,PP及びSIDIS過程において完全なツイスト3断面積公式が整ったこととなる.これにより将来計画されているEIC実験などとの比較・解析から,横偏極ハイペロン生成現象発現のメカニズム解明が期待される.
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