研究課題
特別研究員奨励費
近年、医薬品をはじめ、有機合成により供給が望まれている化合物は分子構造が急激に複雑化している。そのため、工程数の増加・収率の低下が問題となっており、真に実用的な方法論や反応の開発が必須である。スキップジエンは生物活性天然物に広く見られる重要な構造モチーフである。スキップジエンは様々なオレフィンの幾何異性で存在しているが、既存の手法では立体制御が困難であり、全立体異性体を自在に作り分ける方法は無かった。申請者は立体選択的にスキップジエンを構築する手法として、アレンのヒドロホウ素化と続く右田-小杉-Stilleカップリングを組み合わせる合成法を開発した。本研究課題では、開発した手法を連続的に用いてスキップポリエン合成へ展開し、生物活性を有する複雑分子の合成への応用を目的とした。開発した手法をマダンガミン類の網羅的全合成へ適用し、本反応の有用性を拡張する計画である。マダンガミン類は特異な構造を有する五環性アルカロイドである。マダンガミン類が有する五つの環の内、ABCE環を共通骨格とし、残るD環のみが異なる類縁体としてマダンガミンAからEまで知られている。マダンガミンA、Dは異なるヒトがん細胞に対する細胞毒性を示しており、マダンガミン類の活性とD環構造には相関がある。しかし、他のマダンガミン類の生物活性は未解明であった。申請者は開発したスキップジエン構築法の有用性を示すため、マダンガミン類の合成研究に取り組んできた。平成30年度までに、スキップジエンの立体選択的構築を経由した共通骨格ABCE環の合成に成功していた。更に共通骨格からD環を作り分け、マダンガミンA、C、Eの全合成を達成していた。平成30年度は、残る類縁体であるマダンガミンB、Dの全合成に、世界に先駆けて成功した。更に、合成したマダンガミン類の細胞毒性試験を行い、マダンガミン類の生物活性とD環構造の相関を明らかにした。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Bulletin of the Chemical Society of Japan
巻: 92 号: 3 ページ: 545-571
10.1246/bcsj.20180334
130007611672