本研究では、マトロイドから定められるBergman扇の貼り合わせとして定義される、Mikhalkinらの意味でのトロピカル多様体と、Calabi--Yau多様体のGromov--Hausdorff極限やSYZ予想における特殊Lagrangeトーラスファイブレーションの底空間として現れると期待されている、特異性を許容する整アフィン多様体の間の関係性を理解することと、両者のトロピカル周期を定式化することを目指していた。本年度は、Calabi--Yau超曲面の周期のトロピカル化に関して研究を行った。穴あき円盤上のn次元トーリックCalabi--Yau超曲面の退化族が定める、入谷の留数B模型Hodge構造の変動を考える。これは加藤--臼井の意味の対数的偏極Hodge構造の変動(LVHS)として自然に退化点まで拡張される。一方で、退化族をトロピカル化して得られる、n次元トロピカルCalabi--Yau超曲面を収縮することによって、特異性を持つ整アフィン構造付きn次元球面Bを構成することができる。昨年度、このようにして得られる整アフィン球面Bのradiance obstructionの計算を行ったが、その計算を基に、Bのradiance obstructionを用いて、standard log point上の偏極対数的Hodge構造を構成し、それが、退化族が定めるLVHSの退化点への制限に一致することを示した。
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