研究課題
特別研究員奨励費
シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803は明暗条件において明所で増え、暗所で増殖を止める。増殖度のON/OFFを切り替えることは栄養源の枯渇を防ぐ意味で適切にコントロールされる必要があると考えられる。疑問として、どのように明暗条件において増殖を調節しているのか?という点を挙げ、遺伝子破壊株や高発現株を作製し、調べた中で数種類暗所でも増殖する株を見出し、本研究では代謝的側面を理解するためにNADK破壊株を解析した。酵素活性解析や呼吸活性、ATP/ADP比の計測により、NADK破壊株ではNADが蓄積し、解糖系や TCA 回路が明所で本来よりも活性化することで、暗所で抑制されなくてはいけない酵素活性が理想的に抑制されず、呼吸活性の上昇と同時に、ATP/ADP、ATP/AMP 比の抑制がきかず、増殖がWTよりも早くなっていることがわかった。暗所で増殖する遺伝子破壊株に関しては過去に一つ例が知られているが、代謝的側面から暗所での増殖を可能にする原因を突き詰めた例は本研究が初めてであり、シアノバクテリアの増殖特性を理解する上で新たな知見となった。また、本研究を契機とした有用物質生産の増産といった応用研究の発展が期待される。一方、学術的にも、シアノバクテリアのNADKの生理機能に関しては知見が少ない。その為、シアノバクテリアのNADKによるNADP/NADの調節が暗所での増殖を調節する一つの代謝的因子であることは、これまで知られてこなかったNADの生理機能といえる。また、シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803は2種類のNADKを有しているが、それぞれの遺伝子破壊株が明暗条件で真逆の増殖特性を示すことが本研究によりわかり、本研究を契機にそれぞれのNADKの生理的機能明確な違いがなぜあるのか、今後の進展が望まれる。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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