研究課題
特別研究員奨励費
ラマン顕微分光法は,非染色・無標識で分子の動態をイメージングできることから、生体分子の動態観測に対して強力なツールになりうる。しかし、通常のラマン顕微鏡では測定点の走査が必要なため撮像に時間がかかる。そこで本研究では、逆ラマン現象を利用して面全体を同時に測定することで、高感度かつ高速検出可能なラマン顕微鏡の開発を目指している。逆ラマン現象は,分子に入射した二色の光(励起光とプローブ光)の振動数の差が分子振動の振動数と一致した時にプローブ光の強度が変化するという現象で、通常の自発ラマンよりも三桁ほど大きな信号強度を与える。このため,通常の透過型光学顕微鏡を用いて,面で測定できれば画像の撮像時間を劇的に短縮することができる。しかしながら、開発されている逆ラマン顕微鏡の多くが、励起光の強度をMHz単位で変調させて逆ラマンシグナルを得ているため、現行の二次元検出器(CCD等)を用いて面で測定することができない。そこで、二次元検出器を用いて逆ラマンイメージングができるように、kHz単位で変調した励起光により逆ラマン信号を得る方法を新規に開発した。まずは、単一の検出素子で光学系の設計や検出限界のレベルを調べた。通常の顕微光学系で同軸で二色の光を入射し、面で検出するためにあえて励起光をデフォーカスさせて数十μmの領域が見えるように設定した。励起光を変調させて信号強度変化を測定するため、励起光の漏れ光が巨大なノイズになる。徹底的なノイズ除去や、デジタル的にロックイン検波を行う解析アルゴリズムの開発により、リアルタイムで0.06%以下の強度変化を検出できる単一チャネルの逆ラマン顕微装置を開発できた。この装置を用いて、油滴を脂質のモデル物質として用いた試料の逆ラマンシグナルによる顕微観察に成功した。今後、今回開発した単一素子を二次元検出器に置き換え、イメージング型の逆ラマン顕微鏡を目指す。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Protein Science
巻: 28 号: 3 ページ: 663-670
10.1002/pro.3569