研究実績の概要 |
本研究は、集合化により高い緩和能を示す分子Gd-X-UBD (X=AL,Eg3)に、Gdへの配位能及びROS応答性を有するTEMPOラジカルを導入することによって、活性酸素種(ROS)応答的に緩和能が増大するturn-on型Gd錯体を構築することを目的としている。本錯体はGd-DOTAに適切なリンカーを介してTEMPOラジカルを導入することで、Gd-TEMPOラジカル間の配位と、ROS応答的な配位の解消による緩和能の増大が起こることを戦略としている。 そこで本年度は(i)リンカーが緩和能に与える影響を明らかとする(ii)Gd-TEMPOラジカル間の配位が可能な錯体を構築するの2点について研究を行った。まず(i)について、TEMPOを有さず、かつリンカーをアルキル鎖またはエチレングリコール(Eg)鎖とした誘導体を用いてリンカーが緩和能に与える影響を精査した。その結果Egリンカーを用いた場合、リンカー中の酸素原子がGdへ配位し、結合水数及び緩和能が低下することを明らかにした。続いて(ii)について、種々のリンカーを有するTEMPO直結型Gd錯体を合成し、ESR測定及び緩和能測定を行なったところ、適切な長さと柔軟性を有するEg3リンカーを用いることで、Gd-TEMPOラジカル間の配位が可能な錯体を構築できることを明らかにした。今後はTEMPO直結型Gd錯体について、ROS存在・非存在下で結合水数及び、緩和能を測定することで、ROS応答性について迅速に評価する。また脂質ラジカルモデルマウスに投与することで、生体内でのROS応答性についても検討し、ROS応答的な緩和能増大が可能なturn-on型Gd錯体構築へと展開していく。
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