イムノアッセイの一種である凝集沈降法は、抗体を表面に固定した微粒子と検体を混合し、抗原が存在した場合に生じる粒子間架橋による粒子分散液の濁度上昇を観察する手法である。簡便・安価な診断手法として臨床現場で用いられているが、凝集沈降法は測定感度が低いためウイルス疾患など微小量抗原をターゲットとした検出には適さず、より煩雑な分析手法を用いる必要があった。これまで検出感度が低かったことの原因として、粒子表面での抗体の配置制御がなされておらず、抗体が粒子表面上で凝集して不活性化することや、粒子間結合に多数の抗体が寄与していたことが挙げられる。そこで本研究では、凝集沈降法の高感度化に向けて、微粒子表面に修飾する抗体の配置制御に注目した。粒子表面において抗体の配置制御を可能とするために、粒子表面上にミクロ・マクロ相分離構造を作製・制御することで、相選択的に抗体を固定させられると考えた。 最も検出感度が高くなると考えられる抗体の配置は、粒子表面に抗体が3方向に一つずつ配置されたものである。そこで、異なる3種類のホモポリマーをTHF中に混合し、水を滴下後、THFを蒸発させ高分子微粒子を作製することで(自己組織化析出法)、粒子表面を3等分するような表面構造を持つ微粒子(Ashura粒子)を作製することに成功した。また、用いるホモポリマーの組み合わせによって発現する相分離構造の制御も可能であることを明らかにした。今後、本研究によって開発された粒子表面への抗体修飾を行うことで、高感度凝集沈降法を可能にする高分子微粒子の開発が可能になると期待される。 また、免疫活性を持たない物質の検出にも注目し、粒子表面に金属ナノ構造体、粒子内部に地場応答性を有する微粒子材料を作製することで、地場応答性表面増強ラマン散乱(SERS)活性による分子検出を可能にした。
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