研究実績の概要 |
申請者が所属する研究室ではp53ホモノックアウトマウスの造血幹細胞にV617F変異を有するJAK2遺伝子を導入して正常マウスに移植することでJAK2V617F変異陽性白血病マウスモデルを得られることを報告している。JAK2V617F変異陽性急性骨髄性白血病ではp53変異が協調して生じていることが10-20%と多く、JAK2V617Fがp53経路の変化に関与している可能性が示唆されたため、JAK2V617F陽性真性多血症患者の網羅的遺伝子発現の公開データであるGSE47018を用いて解析を行った。JAK2V617F陽性CD34陽性細胞では正常のCD34陽性細胞に比較してp53,MDM2,MDM4,CHK1/2といったp53およびp53の制御に関連する遺伝子発現量の変化は認められず、エンリッチメント解析でもp53経路の変化は認められなかったが、JAK-STAT経路およびAKT-mTOR経路の活性化が認められ、特にCyclin D1関連遺伝子のenrichmentが明らかになった。これらの結果からp53ノックアウトはJAK経路と相加的に細胞増殖に対して作用していると考えられ、p53経路阻害とJAK経路阻害の併用の重要性が示唆された。一方、AKT-mTOR経路の活性化ではオートファジー活性が低下することが知られているため、マウス造血幹細胞にレトロウイルスを用いてJAK2V617F変異遺伝子を導入してフラックスアッセイを行いオートファジー活性の変化を解析したが特に変化は認められず、AKT-mTOR経路と異なるオートファジー維持機構の存在が示唆された。これまでに、ヒト白血病細胞を用いたxenograft modelにおける解析として、凍結保存された白血病患者の骨髄白血病細胞をNSGマウスに移植を行った。一部のマウスで白血病発症が見られ、これらの白血病細胞をNSGマウスに再移植した2次移植を行ったが発症が見られなかった。今後網羅的遺伝子解析で同定された候補遺伝子に対する治療効果の確認には2次移植マウスモデルでの検証が有用であり、本実験系を確立し検証を行う予定である。
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