研究実績の概要 |
報告者は、平成31/令和元年度において、モデル糸状菌のα-1,3-グルカン合成酵素(AGS)であるAgsA, AgsBのキメラタンパク質発現株を作製し、両酵素の多糖合成における違いを検証した。その結果、AgsAの細胞外ドメインを有するAgsAex-AgsB発現株は、AgsAと同等のα-1,3-グルカン分子量を示した。このことから、AGS合成酵素の細胞外ドメインが分子量の制御を担っていることが強く示唆された。 報告者はまた、α-1,3-グルカン生合成を更に理解するため、in vitroでのα-1,3-グルカン生合成系の構築に向けたAGS-GFP functionalタグ体発現株の作製を試みた。構成的高発現プロモータの制御下で、ORF内にGFP配列を含むagsBを発現させた。親株は菌糸分散性を示すα-1,3-グルカン欠損株とし、α-1,3-グルカンが合成された場合には菌糸が塊を形成するという性質で菌株をスクリーニングした。その結果、作製したAGS-GFP発現株は菌糸が塊を形成する性質を示し、GFPの蛍光も観察され、目的の株が得られたことを確認した。今後、本菌株から得た膜画分を用い、in vitroでのα-1,3-グルカン合成反応を試みるとともに、当該実験系に対してα-1,3-グルカン生合成に寄与するα-アミラーゼAmyDやAmyGを添加してその機能を明らかにしたいと考えている。 報告者は、平成30年度までに細胞外分泌多糖ガラクトサミノガラクタン(GAG)の菌糸凝集性をin vitroで評価する系を確立してきた。平成31/令和元年度には、GAGを介した菌糸凝集メカニズムについてさらに解析した。種々の解析の結果、GAG分子中のガラクトサミン残基のアミノ基を介した水素結合が、GAGによる凝集の本質であることが強く示唆された。
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