研究課題
特別研究員奨励費
昨年度までにオオムギが持つ抗菌性活性物質ホルダチンの生合成にラッカーゼが関わることが示唆された。今年度は、ホルダチン合成酵素(HS)の候補遺伝子の機能解析と近縁種におけるHSオルソログの有無について調べた。HS活性を持った2つのラッカーゼをタバコおよびアグロインフィルトレーションを用いて異種発現し機能を調べたところ、立体特異的なHS活性を示した。基質特異性についても調べたところ、ホルダチン類の前駆物質であるクマロイルアグマチンやフェルロイルアグマチンを好むことがわかった。オオムギにおけるHS遺伝子の獲得の原因を探るために、コムギおよびH.murinumにおけるHSオルソログを有無を調べた。コムギおよびH.murinum共にHSオルソログを持っていたため、配列を比較すると部分的な欠損および挿入が生じていた。これらの違いが、ホルダチンの合成に関わる重要な変異であると考えられる。これらの防御物質を調べる過程で、オオムギとコムギが持つ誘導性の防御物質の蓄積を見出したため、それら防御物質の同定およびその生合成について調べた。病原菌を接種したコムギおよびオオムギは、未同定のファイトアレキシンを蓄積することを見出した。それら化合物を単離し、構造解析を行ったところ、いずれもフェニルアミドを骨格とする新規の化合物であり、トリティカミドA-Cと名付けた。オオムギを用いて、トリティカミド類の生合成に関わるアミド合成酵素遺伝子も同定した。以上の成果と昨年度の成果と合わせ、オオムギ属植物において生じた二次代謝の大きな変動には、特徴的なラッカーゼの獲得が関わることが明らかになった。本研究から派生し、ムギ類では病原菌感染によって、トリティカミド類がファイトアレキシンとして機能していることもわかった。これらの防御物質がムギ類の病原菌に対する誘導性の防御に関わると考えられる。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Phytochemistry
巻: 167 ページ: 112098-112098
10.1016/j.phytochem.2019.112098
International Journal of Molecular Sciences
巻: 20 号: 22 ページ: 5541-5541
10.3390/ijms20225541