研究課題
特別研究員奨励費
Nヘテロ環状カルベンを配位子に有する遷移金属錯体を触媒とする、不活性な芳香環を温和な条件で触媒的に分解する反応を見いだし、種々の測定に基づき反応機構の推定を行った。基質として種々のベンゼン誘導体を検討し、過去に研究代表者が報告したルテニウム(II)錯体を触媒に用い、酸性水中、セリウム(IV)錯体を犠牲酸化剤とする触媒的分解反応の検討を行った。その結果、各種測定から、ギ酸が主生成物として得られることがわかった。このギ酸は、既報のロジウム触媒により水素へと変換され、有害なベンゼンから燃料となる水素を取り出すことに成功した。この反応は、電子求引性置換基を導入すると反応活性が低下することから、酸化活性種の基質に対する求電子攻撃が示唆された。さらに、本反応の各種速度論的解析や生成物分析を行い、反応機構の推定を行った。一方、パラジウム(II)錯体を触媒、過硫酸の複塩であるオキソンを犠牲酸化剤に用いた際には、無置換のベンゼンよりも、クロロベンゼン誘導体の方が、分解反応が高効率で進行することがわかった。この反応に対する速度論的解析や、パラジウム(II)錯体とオキソンとの反応で生じる化学種のキャラクタリゼーションから反応機構の推定を行った。最後に、パラジウム(II)錯体とオキソンの他に、セリウム(III)塩を触媒量添加することで、フルオロベンゼン誘導体に対しても酸化的分解反応が進行することを見いだした。さらに添加剤にジカルボン酸塩を用いることで、脱フッ素化が高効率に進行することもわかった。各種分光学的測定により、反応機構の推定を行った。これらの知見は、有害物質や廃棄物から資源を取り出すだけでなく、極めて不活性な基質を酸化するための厳しい酸化反応条件に耐えうる配位子設計の指針に繋がる。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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http://www.chem.tsukuba.ac.jp/kojima/Site/Site/Home.html