研究実績の概要 |
本年度は、アレニルシランを基質とした連続反応の開発と、dictyodendrin類の合成と活性評価を実施した。 最初に、アレニルシランを基質としたインドロキノリン環構築反応の検討を行った。アレニルシラン前駆体であるプロパルギルアルコールは、市販品から2工程で合成した。引き続き、種々のアレンへの変換反応を試みたが、目的物は得られなかった。プロパルギルアルコールを基質とした連続環化反応も検討したが、原料回収に終わっている。このように、本反応は基質の合成が容易ではなかったため、検討を断念した。 次に、dictyodendrin AとDの合成に着手した。金触媒を用いた連続環化反応により得たdictyodendrin型ピロロカルバゾールを用いて、選択的アシル化を含む数工程を経てdictyodendrin Aの形式合成を達成した。Dictyodendrin Dについては、dictyodendrin Fと類似の戦略により形式全合成を完了した。昨年度までにdictyodendrin B, Fの全合成とC, Eの形式全合成を達成しているため、今年度の成果により、dictyodendrin A- Fの多様性志向型合成法を確立したこととなる。続いて、得られた合成中間体の生物活性評価を行い、天然物のdictyodendrin類よりも強い細胞増殖抑制活性を有する化合物を見出した。さらに、ピロロ[2,3-c]カルバゾールとピロロ[3,2-c]カルバゾール骨格について、キナーゼ活性剤テンプレートとしての活性を評価した。32種類のセリンスレオニンキナーゼに対して行った結果、CDK2とGSK3βに対して阻害活性を示すことを明らかにした。これにより、ピロロ[2,3-c]カルバゾールとピロロ[3,2-c]カルバゾール環が、キナーゼ阻害活性を有する新規骨格として有用であることを示した。
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