特別研究員の研究は大きく2つに分けられる。1つ目は、量子力学的に拡張された機械学習アルゴリズムの研究であり、2つ目は数理生物・金融工学における揺らぎの定理の研究である。 [1] 本研究では量子計算機上で動く機械学習アルゴリズムを開発するという研究を目指した。特に機械学習でよく利用されるEMアルゴリズムに着目した。まず、EMアルゴリズムのランダム化を行い、そのランダム化されたEMアルゴリズムを量子計算機上で効率よく計算する手法を開発した。この結果はPhys. Rev. Aに採択された。また、本研究はオーストリア・インスブルック大学のWolfgang Lechnerグループとの共同研究である。 [2] 上記の研究と並列し、上記の研究に加え、統計力学と数理生物・金融工学の研究にも着手した。特に、統計力学における揺らぎの定理に着目した。相互作用しながら増殖する細胞集団を考え、揺らぎの定理が成り立つことを示した。この結果はPhys. Rev. Eに採択された。 [1]と[2]の研究は総括すると、物理学と機械学習の融合から始まり、その他の分野へと波及しており、当初の計画を超えて進展があったと言える。
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