本研究活動は当初から計画していた「外国人に対する出入国管理政策が外国人の受入国にどのような影響をもたらすのか」という研究課題から大きく広がりを見せ、単に外国人に対する政府の出入国管理政策だけでなく、政府活動自体についての分析など様々な政策課題に関する研究を行った。 当初の計画では訪日外国人向けの査証政策と訪日外国人数・不法残留者数に関する実証分析に加え、出入国管理政策と経済成長についての理論分析と外国人材の受入れの実証分析の、合わせて3つの研究を行うということとなっていた。データ入手やモデル構築の困難性から後者2つの研究については期待通りの進展がみられなかったものの、発展した分野で研究成果が得られた。 具体的には、人の移動に関する出入国管理から視野を広げ、イギリスやアメリカで移民の問題と合わせて観察されるような法人移動の問題や、合理的な政府において実施される政策が、結果として非効率な資源配分をもたらす構造の分析など、興味深い研究を行い、研究成果を残しており、幅広い視点で見れば、研究は進展しているといえる。 まず、当初からの研究課題である、外国人に対する出入国管理政策については、訪日外国人向けの査証政策と訪日外国人数・不法残留者数に関する実証分析の精緻化を進めており、学会での発表・学術誌への投稿に向けてさらなる研究を進めている。この研究では、訪日外国人向けの査証政策は不法残留者に影響が見られないという新たな結果を得た。 また、これに関連し、税関施設への視察・ヒアリング調査の実施を行った。国内外の消費税の差額を利用した犯罪の取り締まり事例の紹介を受けるなど出入国管理の実態把握を行い、国内政策が人・ものを含めた出入国管理政策に大きく影響を及ぼすことが明らかとなった。 また、政府活動の分析については、コモンプール問題という財政問題に関する研究が行われ、成果が出た。
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