研究課題/領域番号 |
18J12667
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
植物分子・生理科学
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 (2019) 東京大学 (2018) |
研究代表者 |
杉山 友希 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2019年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2019年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2018年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 道管 / 二次細胞壁 / 細胞膜ドメイン / ROP / アクチン |
研究実績の概要 |
道管では二次細胞壁が穴を作るように沈着する。この穴は壁孔と呼ばれ、二次細胞壁が著しく沈着してできたアーチ型の縁構造を持つ。壁孔の形成には、ROPタンパク質が集合してできた細胞膜ドメイン(ROPドメイン)が鍵として働くことが知られる。しかし、壁孔の縁構造を形成する分子機構はこれまで明らかとされていなかった。 本研究ではまず、道管で働く新規の細胞骨格付随タンパク質の同定に取り組んだ。道管で特異的に発現する遺伝子群をマイクロアレイデータに基づき選抜し、さらに道管培養細胞を用いた可視化スクリーニングによって細胞骨格様の局在を示す候補を選抜した。この結果、壁孔の縁に特異的に局在する機能未知のタンパク質を見出し、WALLIN(WAL)と名付けた。シロイヌナズナ植物体における遺伝学的な解析の結果、WALは壁孔の縁構造の形成に必要なことが明らかとなった。生化学的な解析により、WALはアクチン繊維に直接結合することが明らかとなった。そこで、WAL機能欠損体におけるアクチン繊維の局在を解析した結果、WALはアクチン繊維を壁孔に局在させるために必要であることが明らかとなった。続いて、WALが壁孔に局在する仕組みを調べるために、新規ROPエフェクターとして同定されたBDR1に着目した。WALとBDR1の局在解析、遺伝学的な解析、および生化学による相互作用の検討を行った結果、WALはBDR1を介してROPに相互作用し、壁孔に局在することが明らかとなった。以上の結果から、ROPドメインがBDR1-WAL-アクチン繊維経路を誘導し、壁孔の縁構造の形成を制御することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、植物細胞の形態形成における細胞膜ドメインの機能や制御機構の解明を目的としている。今年度は、道管のROPドメインの下流で働く新規のアクチン繊維タンパク質WALの機能解析を行った。その結果、新規のROP-アクチン経路が壁孔の縁構造の形成を制御することが明らかとなり、この成果をNature Communications誌に発表した。これらの成果は当初の計画を超えて、細胞膜ドメイン形成とアクチン繊維の相互作用に関する新しいコンセプトを提案するものであり、期待以上の進展があったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
道管のROPドメインは本研究で同定された経路の他にも、MIDD1-KIN13A-微小管経路により壁孔の形成を制御している。道管はこれらの経路を巧みに使い分けることで複雑な二次細胞壁パターンの形成を実現していると考えられるが、BDR1経路とMIDD1経路の混線を回避する仕組みは明らかとなっていない。今後は、BDR1が壁孔の縁に特異的に局在する仕組みに着目することにより、その制御機構を明らかにしたいと考えている。
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