研究実績の概要 |
疾患メカニズム解明を目的としたゲノムワイド関連解析から、疾患発症に関連するSNPが数多く同定されている。疾患感受性SNPは、タンパク質をコードする領域から、プロモーターやエンハンサーなどの遺伝子制御領域まで幅広く存在する。しかしながら、タンパク質をコードする領域のSNP解析は広く行われているものの、遺伝子制御領域に存在する疾患感受性SNPの解析はほとんど行われていないのが現状である。本研究では、1,000種類以上のヒト転写因子で構成された転写因子プロテインアレイを構築し、「遺伝子の発現変動を伴う疾患感受性SNP DNA」と「コントロール DNA」に対して、結合力が異なる転写因子を同定する技術の開発を目的とする。 昨年度の研究成果では、1,000種類以上のヒト転写因子で構成された転写因子プロテインアレイの構築に成功した。さらに、作製した転写因子プロテインアレイと、選定した「コントロールDNA」および「疾患感受性SNP DNA」の相互作用解析を行うことで、各DNAに対して結合力の異なる転写因子を選抜可能な技術基盤を構築した。 本年度では、構築した実験系を基盤として大規模スクリーニングを展開し、合計13組の「コントロールDNA」および「疾患感受性SNP DNA」と1,000種類以上のヒト転写因子の相互作用解析を行った。結果として、各DNAセットに対して結合力の異なる転写因子を選抜することに成功した。また、スクリーニングから選抜された転写因子に対してルシフェラーゼレポーターアッセイを行ったところ、SNPによる1塩基の違いによって異なる転写活性を示した。 これらの結果から、本研究技術は「コントロールDNA」と「疾患感受性SNP DNA」に対して結合力の異なる転写因子を選抜可能な技術であり、疾患感受性SNPを解析する上での重要な技術であると考えられる。
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