研究課題
特別研究員奨励費
ヒト骨肉腫は,年間新規罹患者数150人程度であり,希少がんに分類されている。一方,イヌ骨肉腫の発生頻度は,ヒトと比較し,非常に高く,比較腫瘍学的観点から注目されている。SETは,重要ながん抑制因子であるPP2Aを阻害することで,ヒト・イヌの様々ながんの悪性化に関与していることが報告されているが,骨肉腫における働きや,ヒト・イヌにおける種差を検討した報告は存在していない。SET発現抑制は,イヌ骨肉腫細胞株であるPOS細胞の細胞増殖およびコロニー形成能,HM-POS細胞のコロニー形成能を有意に抑制することが明らかになった。さらに,SET発現抑制により,POS細胞,HM-POS細胞において,共通し,がん細胞の悪性化に関与するERK1/2シグナルが抑制されることが明らかになった。また,SET標的薬であるFTY720は,現在,イヌやヒト骨肉腫の治療に用いられているシスプラチンと併用効果を示すことが明らかになった。さらにヒト骨肉腫においても,SET発現抑制によるコロニー形成能の低下が観察され,イヌと同様の働きを有していることが示唆された。SETはがん抑制因子であるPP2Aを阻害することで,がん悪性化に関与していることが明らかになっている。しかし,SETがどのようにしてPP2Aを阻害しているのかは明らかになっておらず,ヒト・イヌにおける比較が困難であった。本研究では,ヒトSETが細胞内で2量体を形成し,PP2A/B56複合体と結合していることを明らかにした。さらに,SETの2量体化阻害機能を有する化合物を特定することで,新たなSET阻害剤の候補化合物を同定し,構造最適化を行っている。また,イヌのSETとヒトのSETはアミノ酸配列に94%の相同性があることから,イヌにおいても2量体化がSETの機能において重要であることが示唆された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019 2018
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The Journal of Veterinary Medical Science
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