研究実績の概要 |
本研究では、i/o ファミリーのG タンパク質 (Gαβγ) が選択的にGIRK を開口させる構造機構を解明するため、Gαβγ 上のGIRK 結合部位を明らかにし、選択性を決定する要因を同定することを目指した。 GIRKとGタンパク質の複合体の構造情報を核磁気共鳴 (NMR) により取得するため、安定同位体標識化合物を使用した培地にてGタンパク質を発現、精製した。GIRKは非標識体を発現・精製し、脂質膜環境への再構成、常磁性試薬による修飾を施した。両者を混合した試料を所属研究室専用のNMR装置で測定し、常磁性緩和促進効果から分子間の距離情報を収集することで、GIRKとGαβγとの近接部位を明らかにした。NMR実験の結果に基づくドッキング構造計算を実行し、複数の構造のアンサンブルからなる複合体モデルを構築した。モデル構造から明らかとなった結合部位を検証するため、GIRK結合部位であるαAヘリックスを変異させたGタンパク質を作製し、GIRKとの相互作用が生じるかを検討した。その結果、野生型と比べて変異体においてはGIRKとの相互作用が減弱していたことから、モデル構造の妥当性が支持された。 また、細胞内での相互作用の機能を検討した。HEK細胞を購入し各種タンパク質を発現させた。タンパク質同士の相互作用を検出するため、発光基質試薬を添加した際の生物発光共鳴エネルギー転移(BRET)を観測した。受容体刺激に伴うGIRKと開口因子GβγとのBRETからGIRKの活性化を観測する実験を、i/oファミリーおよび変異体のGタンパク質を用いて行い、相互作用の有無と一致する選択性を検出できた。以上の結果を統合して、GαのαAヘリックスを介したGIRKとの結合が、活性制御の選択性を決定していると結論した。(Kano et al., Nature Communications, accepted)
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