研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、日本で採取された石筍を分析することで後期更新世から完新世までの陸域におけるアジアモンスーン挙動とそれに伴う古環境変動を明らかにすることを目的としている。インドモンスーンの影響を受けないとされる日本の石筍を用いることで、これまで広く受け入れられてきた中国石筍によるアジアモンスーン指標を補完/刷新することが期待される。本研究では昨年度に引き続き、三重県霧穴洞窟、新潟県福来口洞窟などから採取された石筍を中心に分析をしている。三重県で採取された石筍は、付近の雨水分析の結果とその酸素同位体比変動の結果から、降水量の変動よりも気温変化の影響を色濃く受けていることが示唆されている。2本の石筍の凝集同位体から、最終氷期から完新世にかけての同位体変化は気温変化で概ね説明できることが明らかになった(投稿準備中)。また、完新世の記録を高解像度で保持している石筍の微量元素変動は石筍の炭素同位体比変動とよく一致していることが判明した。これは炭素同位体比変動が、石灰岩母岩中の乾燥具合に大きく支配されていることを示唆している。つまり、この洞窟の石筍の炭素同位体比変動は降水量変動に支配されていることが示唆された(投稿準備中)。新潟県で採取された石筍の酸素同位体比変動は、昨年度に報告したように、最終氷期に日本海が成層化していたことを示唆している。本年度ではさらに解析を進め、当時の日本海表層の塩分を見積もった。その結果、当時の海洋表層塩分は30を下回る可能性が示唆され、当時の海洋表層環境は海洋生物にとって極めて厳しい生息環境であったことが示唆された。これらの内容を論文にまとめProgress in Earth and Planetary Science誌に投稿した。このほかにも、本研究では静岡県の洞窟から採取された石筍や同じくアジアモンスーン域に属している熱帯地域の石筍の分析も進めている。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件)
Geochimica et Cosmochimica Acta
巻: 244 ページ: 548-564
10.1016/j.gca.2018.10.016
ACS Omega
巻: 4 号: 2 ページ: 2702-2707
10.1021/acsomega.8b03311
Quaternary Science Reviews
巻: 192 ページ: 47-58
10.1016/j.quascirev.2018.05.024