社会性昆虫では、ワーカー(働きアリ)が巣内の育児や掃除、防御、採餌などさまざま仕事について、分業が行われている。どの個体がどの仕事を行うかという担当は、日齢によっておおまかに決まるが、コロニー(巣)内の状況により、仕事量は変動する。その変動に柔軟に対応するため、個体間相互作用による仕事の割り当てや働く時間の調整がなされていると考えられる。しかし、技術的な問題から、社会性昆虫の集団レベルでの定量的な行動観察はほとんど行われていなかった。本研究は、コロニーレベルでトゲオオハリアリ(Diacamma sp. from Okinawa)の行動を定量的に測定し、各個体の仕事内容がどのように決まるのかという、分業メカニズムの解明をめざした。 本年度は、継時的な飼育により各個体の日齢を把握している、計11コロニーを観察し、どの個体が、いつ何をしているのかを解析した。位置情報から自動的に巣内と巣外の滞在時間を個体ごとに計算し、外勤活動率を調べた。従来の報告通り、老齢の個体が外勤活動を盛んに行なっていたものの、同じ齢でも個体差が大きいことを発見した。このことから、採餌個体は、日齢だけではなく、生理状態や経験など、複数の要因によって、影響を受けることが示唆された。さらに、1日の中で、採餌など外勤活動や育児活動には、変動がなく、昼夜問わず仕事をしていることがわかった。この成果について、論文化に向け準備中である。
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