原子核のクラスター模型を拡張し、テンソル力の効果を議論出来るtensor version of antisymmetrized quasi cluster model (AQCM-T)を構築し、ヘリウム4やベリリウム8等の軽い原子核に適用した。それぞれのαクラスターがシェル模型の基底配位である(0s)^4構造を持つと仮定するのではなく、2つの陽子、2つの中性子、或いは陽子と中性子が僅かに異なるガウス中心座標パラメーターを持つと考えることで、従来のクラスター模型では扱うことができなかったテンソル力の効果を記述した。また、テンソル力についても現在の模型空間に則し、且つ計算も行いやすい現実的核力を採用した。 ヘリウム4について、クラスター模型の枠組みで、現実的なテンソル力を用いて、実験と一致する基底状態のエネルギーを得た。また、従来のクラスター模型と比較すると、テンソル力の有無だけでなく、中心力エネルギーや運動エネルギー等、エネルギーの内訳にも差異が生じることが分かった。これらは従来のαクラスター模型に対して重陽子のようなD波の成分が僅かに混じることが原因であることが明らかになった。ベリリウム8については、現実的なテンソル力を用いたAQCM-Tの枠組みで、テンソル力の効果によって2つのαクラスターが互いに接近することが阻害され、2αクラスター構造が発現することが明らかになった。クラスター模型の枠組みで現実的なテンソル力を用いてベリリウム8のクラスター化の機構を示したのは初のことである。
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