研究課題
特別研究員奨励費
膜ろ過プロセスは水処理装置の高効率化、装置のコンパクト化が可能であることから、排水処理から浄水処理まで幅広く用いられている。しかし、バイオファウリングによるろ過膜の目詰まりが運転コストの増大や膜の劣化等の深刻な問題を引き起こす。近年、細菌細胞の密度感知システムであるクオラムセンシング(QS)とバイオフィルム由来の膜の目詰まりの関連が報告されている。バイオファウリングが進行して細菌密度が増大することで、細菌細胞をやり取りするシグナル物質濃度が一定の値に達すると、細菌の細胞外多糖類(EPS)の産生が始まり、バイオフィルムの形成につながる。また、このシグナル物質の制御がバイオフィルム形成抑制のキーであることが報告されている。そこで本研究は、高透水能とバイオフィルム形成抑制能を兼ね備えた新規酵素固定化型ろ過膜の開発を目的とする。初年度は特に、ろ過膜の作製とキャラクタリゼーションを中心に研究を進め、次年度は主にQSを持つピュアカルチャを用い、バイオフィルム形成抑制効果の評価を行った。その結果、カルボキシベタインを化学修飾した材料の開発により、ろ過膜表面の親水性の向上に成功し、さらに、情報伝達物質が有するアシル基を分解する酵素であるアシラーゼを固定化した膜に形成されるバイオフィルムを追跡し、酵素を固定化した材料によりバイオフィルムの形成が抑制されることを明らかにしてきた。さらに、QS抑制以外の抑制ポテンシャルを探索するため、溶菌酵素リゾチームをポジティブコントロールとし、アシラーゼ酵素による菌体破損評価した結果、加水分解酵素であるアシラーゼのQS抑制以外の効果が見られた。以上より、アシラーゼを用いた酵素固定化膜はQS持つ菌体のみならず、もっと多くの菌種への抑制効果が検証できることが期待できる。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)
Journal of Bioscience and Bioengineering
巻: - 号: 1 ページ: 82-88
10.1016/j.jbiosc.2020.02.005
Biochemical Engineering Journal
巻: 152 ページ: 107372-107372
10.1016/j.bej.2019.107372