研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、酸化チタンにドープした金属イオンの原子価状態を制御して、光生成ホール-電子対(光生成キャリア)のトラップサイトを空間的に分離させて、再結合を抑制し、高活性な光触媒の創出を目指している。ドープした金属イオンの原子価状態を制御(Ptイオン: Pt(II)/Pt(IV); Crイオン: Cr(VI)/Cr(III))でき、それらの比率が、水中の難分解性有機物である4-クロロフェノールの分解効率に大きく影響することは既にわかっているが、その際の光生成キャリアの動きや寿命はわかっていない。そこで、平成30年度は、パルスレーザーを用いた時間分解分光測定を行って、複数の原子価状態の発現が光生成キャリアのダイナミクスに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。Ptイオンをドープした酸化チタン(Pt-TiO2)粉末にナノ秒パルスレーザーを用いて、時間分解マイクロ波電導度測定を行ったところ(励起波長355 nm)、Pt(II)/Pt(IV)の増加に伴い、光生成電子の易動度が直線的に増加する関係が得られた。Pt-TiO2、Cr-TiO2粉末に、フェムト秒パルスレーザーを用いて時間分解拡散反射スペクトル測定を行ったところ(励起波長400 nm)、800-1100 nm付近にTiO2の光生成キャリアに由来されるブロードな吸収が出現した。1000 nmの吸光度変化を時間分解すると、指数関数でフィッティングでき、それぞれ2つの減衰成分(光生成電子寿命)を得た。Pt(II)/Pt(IV)およびCr(VI)/Cr(III)比の増加に伴い、光生成電子寿命も増加した。つまり、複数の原子価状態の発現により、光生成キャリアの空間的な分離が促された結果、再結合が抑制され、高活性化するというメカニズムを上述の2種類の時間分解分光測定から明らかにでき、高活性な光触媒の開発のための新規な指針が得られた。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Catalysis Science & Technology
巻: 8 号: 18 ページ: 4726-4733
10.1039/c8cy01411f