研究実績の概要 |
本研究の目的は,電力ネットワークに代表される,状態量が空間に分布するシステムを対象とした,クラスタ並列計算による超大規模システムの制御および意思決定手法を確立することにある. 昨年度に引き続き,本年度も気象データといった空間に分布するデータを用いた意思決定法に関する基礎研究として,不確実な再生可能エネルギー大量導入下での電力市場における意思決定法について研究を行った. 電力市場における意思決定には,気象による再生可能エネルギー発電量の不確実性が存在する.そのため昨年度は,過去の気象データなどから求まる再生可能エネルギー発電量の予測値と,再生可能エネルギー発電量の実績値のデータをもとにした機械学習の方法を用いることを提案した.特に,電力小売事業者の利益を評価値として用いた場合の学習アルゴリズムを提案した.しかし,昨年度提案した線形回帰あるいはカーネル法に基づく機械学習モデルでは,学習データの個数が増加すると計算時間と必要メモリ容量が大幅に増加してしまうという問題点があった. 本年度は,この問題を解決するため,機械学習モデルの中でも並列計算に対して有効なニューラルネットワークを用いた方法を提案した. 特に,ニューラルネットワークの学習のために必要な,利益のモデルパラメータに対する勾配の計算方法を導いた.この方法を用いることにより,より多数のデータを用いた学習を行うことが可能となり,過学習が抑制され,未知のデータに対してもより大きな利益を得ることができることを数値シミュレーションにより確認した. 以上の結果から,本提案手法により大規模なデータを利用可能と考えられ,超大規模システムに対する意思決定手法への適用可能性が示された.
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