研究実績の概要 |
これまで(6,4)-、(6,5)-SWNTの生体適合化のために、それぞれをapoA-Iと複合化させ((6,4)-、(6,5)-SWNT/apo)、光応答性を調べてきた。そして近赤外光照射下、(6,4)-SWNT/apoが(6,5)-SWNT/apoよりも高い活性酸素種(1O2、•OH)生成活性を示すことがわかっている。またチオフェン縮環ポルフィリン誘導体ZnPfThICを(6,5)-SWNTと複合化することで、•OH生成活性が増強することも明らかとなった。今年度は、(6,5)-SWNT/apoにさらにZnPfThICを物理吸着させた(6,5)-SWNT/ZnPfThIC/apoを精製取得しようと試みたが、系中に混入する(6,5)-SWNTを含まないZnPfThIC/apo複合体を完全に除去できなかった。今年度までに得られた、(6,4)-SWNTの優れた活性酸素種生成、apoA-I物理吸着による生体適合化、がん・アルツハイマー病治療応用に関するデータをまとめた原著論文を国際誌に投稿した。 またapoA-I研究の一環として、ドラッグキャリア開発研究を進めている高密度リポタンパク質(HDL)の作製法開発も行った。HDLは脂質とapoA-Iからなる生体ナノ粒子であり、既存の試験管内作製法は、緻密な作業を含む多段階の工程からなる。我々は、尿素変性剤を用いて、構成脂質とapoA-Iとを混ぜるだけでHDL作製する方法を考案した。それと同時に、生化学的・分光学的手法を利用して、形成メカニズムを調べた。その結果、30 nmの脂質粒子形成、apoA-Iの脂質粒子表面への結合により、HDLが形成されることがわかった。これらの成果を学会発表し、原著論文を国際誌に投稿した。他にも、リポタンパク質の生合成・構造・生物活性・DDS応用について最近の研究をまとめた総説を執筆し、国内英文誌に投稿した。
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