研究実績の概要 |
本研究員採用までの準備期間として、当初の計画通り、「(1). 1,1-ジボリル-3-ブテンを用いるδ-ボリルホモアリルアルコールの不斉合成」に関して研究を行った。予備検討で得られていたルテニウム触媒を用いる反応に関して、様々な基質が本反応に適用可能であることを見出した。これらの研究成果は英文論文として、Journal of American Chemical Society誌にて発表した。続いて、同研究におけるsyn体のボリルホモアリルアルコールの合成に関して、当初の計画通りニッケル触媒を用いることで本反応が効率よく進行することを見出した。当初の目的であった不斉反応への適用に関しては、30%程度の鏡像体過剰率で得られるという結果に留まっている。現在、これらの研究成果を英文論文として投稿準備中である。 次に、当初の計画通り、「(2). 末端アルキンを出発原料に用いるγ-ボリルホモアリルアルコールの立体選択的ワンポット合成」に関して研究を行った。従来、anti体のγ-ボリルホモアリルアルコールを立体選択的に合成することは困難であった。しかし、末端アルキンから容易に合成可能な1,2-ジボリルアルケンに対して、Grotjahnらによって報告されたルテニウム触媒を作用させた後、アルデヒドと反応を行うことで、立体選択的にanti体のγ-ボリルホモアリルアルコールが合成できることを見出した。その後の検討により、様々なアルデヒドや1,2-ジボリルアルケンに関して適用可能であることを見出した。また、本反応は末端アルキンを出発原料に用いたワンポット合成も可能であることを見出した。さらに、不斉反応を検討したが、不斉リン酸触媒を用いて76%の鏡像体過剰率で目的物が得られるという結果に留まっている。これらの得られた研究成果は、英文論文としてAngewandte Chemie誌に投稿、受理された。
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