活性化されているプロモーターやエンハンサー等の転写制御領域は、転写因子などがDNA にアクセスできるよう、ヌクレオソームによって占有されておらず、アクセシビリティが高い状態(アクセシブルクロマチン)をとる。クロマチンのアクセシビリティは細胞の分化やリプログラミングの過程で大きく変化することが知られており、どのようにクロマチンアクセシビリティが制御されるかを理解することは非常に重要である。クロマチンのアクセシビリティの制御にはヒストンシャペロン、クロマチンリモデラーなどが関与することが知られ、その他にも複数の因子が関与すると予想されている。しかし、これまでクロマチンのアクセシビリティを解析する技術が限られていたために、その全体像は明らかになっていない。そこで本研究では、①アクセシブルクロマチンを検出する新技術ATAC-see 法と、② CRISPR/Cas9 による遺伝子ノックアウト技術を組み合わせたゲノムワイドスクリーニングによって、クロマチンのアクセシビリティを制御する遺伝子を網羅的に同定することを目指した。 スクリーニングの結果、クロマチンのアクセシビリティを制御する遺伝子を同定することに成功した。同定した遺伝子は多岐にわたる機能を持ち、その多くはこれまでにクロマチンへの関与が知られていないものであった。一方、これまでにクロマチンアクセシビリティの制御に関与すると知られていたヒストンシャペロン、クロマチンリモデラーなどは少数しか同定されず、既知の因子はゲノム全体のクロマチンアクセシビリティには影響を与えない可能性が示唆された。さらに、同定した遺伝子のうちいくつかについて、その作用機序を解析した。
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