研究課題
特別研究員奨励費
本研究は形状記憶合金の変態温度を予測する手法の確立及びそのTi基形状記憶合金への適用と合金設計を目的とした。以下に得られた研究実績を報告する。まず、第一原理計算により、デバイモデルを用いて母相とマルテンサイト相(M相)の振動エントロピー項を考慮した自由エネルギーを算出し、その自由エネルギー差が0となる温度から変態温度を算出した。その結果、従来の母相‐M相間のエネルギー差から算出する手法よりも高い予測精度が得られた。さらに、変態温度が既知の合金について、第一原理計算で得られた母相‐M相間のエネルギー差および体積弾性率を説明変数、変態温度の実験結果を被説明変数とした人工ニューラルネットワークを構築し、デバイモデルを用いた手法よりさらに高い予測精度が得られた。構築した変態温度の予測手法を適用しTi基形状記憶合金の合金設計を行った。まずTi-Nb-X合金について、変態温度が室温となる条件下で、ω相を抑制しかつより変態ひずみを大きくする、Ti‐Nb基形状記憶合金の特性改善に有効な元素はAlであった。そこで、Ti-Nb-Al合金について自由エネルギーの変態温度の予測手法を適用し、合金組成の最適化を行った結果、室温で形状記憶特性を発現し、8%の高い変態ひずみを有しかつω相を抑制することができる合金組成を設計できた。さらに、現在までに開発した形状記憶合金の変態温度を予測する手法を、Ti基形状記憶合金に限らず、より幅広い合金系へ適用することによって網羅的に合金探索を行い、新規形状記憶合金の合金設計を行った。具体的にはTi基形状記憶合金と同様に母相にbcc基調の構造を持つ合金に着目し、1000種類以上の合金候補に対して第一原理計算を行い、母相とマルテンサイト相のエネルギー差と格子変形ひずみの絞り込み条件から、これまで知られていない合金系が新規二元系形状記憶合金であるとの予測結果を得た。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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International Journal of Modern Physics B
巻: 33 号: 08 ページ: 1950055-1950055
10.1142/s0217979219500553