研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、緑膿菌のヘム獲得系を標的とする、既存の抗生物質とは異なる作用機序の抗菌薬開発を目指した. 昨年度までに、緑膿菌が分泌するヘム獲得蛋白質HasAに対し、ヘムの代わりに人工金属錯体であるガリウムフタロシアニンを内包させた「ガリウムフタロシアニンHasA」を構築し、緑膿菌の光殺菌剤として活用することに成功した。本年度は、この光殺菌メカニズムの詳細解明に取り組んだ。まず、HasA特異的な外膜受容体であるHasRとガリウムフタロシアニンHasAの相互作用を解析したところ、ガリウムフタロシアニンHasAは緑膿菌の細胞膜に発現している膜蛋白質の中でもHasR特異的に相互作用することが判明した。さらなる調査によって、ガリウムフタロシアニンHasAが緑膿菌の外膜上に発現するHasRと特異的に相互作用した後、内膜蛋白質TonBの機能によって、ヘム獲得と同じメカニズムでガリウムフタロシアニンが緑膿菌の細胞内へ選択的に送達されていることも判明した。また、緑膿菌とは異なるアミノ酸配列のHasRを発現するセラチア菌を、ここまでに使用した「緑膿菌由来のHasA」によって光殺菌できるか調査したところ、ガリウムフタロシアニンHasAを用いる本手法によってセラチア菌は一切死滅しなかった。ゲノムDNA上にhasR遺伝子をコードしていない大腸菌も同様に殺菌されなかったことから、本研究で開発したガリウムフタロシアニンHasAは、緑膿菌のHasRを特異的に識別する、緑膿菌選択的な光殺菌剤であることが裏付けられた。本光殺菌法は、緑膿菌のヘム獲得システムを薬剤の輸送経路として活用することで、光増感剤のガリウムフタロシアニンを緑膿菌内へ選択的に輸送するため、HasRの突然変異を誘導する可能性は低く、耐性化されにくい手法であると期待している。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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https://www.chem-station.com/blog/2019/11/heme.html
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