本研究は、液晶性高分子の自己集合と表面偏析を利用し、液晶性ブロック共重合体を高分子基材に少量添加して加熱することで、高分子高密度ブラシ(以下、高分子ブラシ)を自己集合的に形成する手法を提案するものである。これまでの研究において、表面開始リビング重合で合成的に得られる高分子ブラシと同様の構造が、本手法の溶液キャストプロセスで極めて簡便な作製できることを明らかにしている。この高分子ブラシは、高分子末端が基盤に固定化されたこれまでのものと異なり、液晶性高分子の協同的な運動性、相転移変化や集合作用により動的に構造制御可能な新しい高分子ブラシである。 30年度は、本研究が提案する高分子ブラシの特徴であるブラシ鎖末端が高分子基板表面で動きうるという特徴に着目し、「1.高分子表面に自己集合する液晶ブロック共重合体のブラシ形成プロセスの考察」および「2.液晶性高分子ブラシの高分子賦形構造表面への導入と液晶光配向機能膜への応用」を遂行した。 研究1は、既報で示した液晶性高分子ブラシの形成過程を詳細に考察し、高分子膜表面で自己集合するブラシの制御因子を明らかにした。その結果を踏まえて高分子ブラシをパターン化することに成功し、高分子膜上で動的に高分子ブラシ構造を操作・組織化できる新たな高分子表面技術を提案した。 研究2では、液晶性ブロック共重合体の表面偏析手法を、自己組織化によるハニカム構造形成プロセスに展開し、複雑な形状の高分子成形体表面にも高分子ブラシ構造を導入できる新たな手法を示した。また、ブロック共重合体に光応答性液晶を用いることで、多孔体表面に形成する高分子ブラシが低分子液晶の配向を制御する光コマンド層として機能することを明らかにした。この光応答ブラシ層が有するコマンドシステムは、コレステリック液晶マイクロ液滴のレーザー発振材料への応用として展開が期待でき、現在関連研究が進行中である。
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