研究課題
特別研究員奨励費
本年度は主にMBE-スピン分解ARPES一体装置の高度化とトポロジカルディラック半金属XMg2Bi2(X=Sr, Ba)におけるアルカリ土類金属元素置換によるトポロジカル相転移の観測を行った。装置改良として、6 eVレーザー光源の偏光光学系の設置を行った。偏光光学系を新たに設置することで、高い消光比の円/直線偏光を用いたスピン分解ARPES実験が可能となった。これにより、円二色性や光電子励起選択則を用いた電子バンドの軌道決定や正確な基底状態スピン構造の決定が可能となった。また、上記の装置改良に並行して、トポロジカルディラック半金属候補物質BaMg2Bi2の電子構造の決定と、BaをSrに置換した際の電子構造の変化の観測を行った。バルク敏感な軟X線ARPES実験によってBaMg2Bi2の3次元電子構造を決定した。その結果、本物質がΓ点周りに線形バンドで構成されるフェルミ面のみを持ち、理想的なディラック半金属の電子状態を実現していることを明らかにした。真空紫外光を用いた高分解能ARPESとK原子表面吸着法を用いた線形バンドの全分散の詳細観測から、この線形バンドがギャップレスなディラック錐を形成していることを見出した。これにより、BaMg2Bi2が理想的な電子状態をもつトポロジカルディラック半金属物質であることを明らかにした。また、本物質のアルカリ土類金属BaをSrに置換したSrMg2Bi2の電子状態の決定を行い、スピン軌道相互作用がトポロジカル相に与える影響を精査した。その結果、SrMg2Bi2の価電子帯電子構造はBaMg2Bi2のものとほとんど一致することが軟X線ARPES実験より明らかとなった。一方で、真空紫外光を用いた高分解能ARPES実験によって、SrMg2Bi2はBaMg2Bi2と異なり、価電子帯と伝導帯の間にギャップを持つ通常絶縁体であることを見出した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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