研究実績の概要 |
本研究は、神経幹細胞、前駆細胞の分裂後運命決定を制御する分子基盤を解明することを目的として、小脳顆粒前駆細胞(Granule cell progenitors, GCPs)の母細胞分裂面方向と分裂後の娘細胞運命との相関関係に着目して研究を行なった。初年度に行った研究において、Notchシグナルの抑制因子であるNUMBタンパク質が、GCPsが特定の分裂面方向(層構造に対して垂直方向)で分裂する際のみ、分裂後の娘細胞において不均等に局在することが確認された。この研究結果から、2年度からは、NotchシグナルがGCPsの分裂後運命決定において重要な因子として働いているのではないかという仮説を立てて研究を行い、その結果、小脳顆粒前駆細胞におけるNotchシグナルによる新たな分裂後の運命の制御機構を発見した。GCPs同士におけるNOTCH2とJAG1を介したNotchシグナルが、GCPsの分裂と分化のバランスを制御しており、NOTCH2の下流で発現が制御されている転写因子HES1によって、GCPsの運命決定の重要な制御因子であるNEUROD1の発現が抑制されることにより、適切な小脳発生が制御されていることを明らかにした。 最終年度である本年度は、上記研究内容で国際誌eNeuroに論文を投稿し、3月にアクセプトされた(Adachi et al., eNeuro, 2021. 10.1523/ENEURO.0468-20.2021)。また、3月には同様の内容で、第14回神経発生討論会にて口頭発表を行った(https://sites.google.com/view/ndsymposium14th/top)。
|