研究課題
特別研究員奨励費
昨年度に引き続き、免疫系の複雑な動態を理解するための理論構築に注力した。人体が様々な環境中の物質に曝される中で、免疫系は精密に反応を調整する仕組みを持っている。外来の刺激に対する動的な免疫応答を理解することは、アレルギーなどの免疫系疾患に対する新規の根本的な治療法の開発に役立つと考えられる。昨年度から続けていた、外来の病原体感染によって自己免疫疾患が引き起こされる「分子擬態説」に基づいた発症機構の理論構築について、年度前半に論文が国際誌で受理された。この発症機構において、交差免疫反応が疾患発症に対して影響することを計算上で示した。その後も引き続き本数理モデル解析について精査し、日本数理生物学会年会でオンライン発表を行い、研究成果の公開と他研究者との議論を行った。腸内細菌叢や免疫細胞動態の日周変動も、治療において無視できない。そこで、最適な介入時間帯の予測への応用を見据えて、概日時計の数理モデリングにも取り組んでいた。グルコース代謝の概日時計制御の理論研究について論文に取りまとめ、国際誌に投稿し査読中である。哺乳類の休息時間での摂食は、過剰な脂肪蓄積を惹起すると知られている。食物から摂取されたグルコースは、グリコーゲンまたは脂質の貯蔵物質へ配分される。この過程の反応が概日時計制御を受けるという報告に基づき、本来の休息時間での食事が肥満を引き起こす仕組みについて、理論研究の手法から解明に取り組んだ。この現象には人体の恒常性維持のための機構が関与していると考え、代謝上の「リスク」、ここでは高血糖やエネルギーの枯渇に着目してリスクを定式化し、脂質やグリコーゲン産生のピーク時刻を変化させ、リスクが小さくなる条件を探索した。結果としては、休息時間には脂質合成が盛んになることを予測し、さらにそのような条件下では昼夜を通して恒常的にエネルギーを供給することができると明らかにした。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件)
Journal of Theoretical Biology
巻: 498 ページ: 110296-110296
10.1016/j.jtbi.2020.110296
巻: 464 ページ: 9-20
10.1016/j.jtbi.2018.12.021