研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、養殖魚におけるゲノム編集を効率化するために、顕微注入せずにゲノム編集する方法を開発することを目的としている。これまでに、卵巣への注射 (IMO: injection into the mother’s ovary) で組換えタンパク質やRNP (gRNAとCas9 proteinの複合体) などを卵母細胞および受精卵に導入できることを確認している。本年度は、この成果を論文に取りまとめて、魚類生化学の国際誌に投稿し、受理、出版された。また、本研究では、受精卵に取りこまれた組換えタンパク質やRNPが卵黄顆粒(エンドソーム)に封入され、胚に移行しないことが問題となっている。この問題を解決するために、蚊での報告(Chaverra-Rodriguez et al. Nat Commun, 2018) を参考にして、クロロキンを用いて卵黄顆粒を破壊し、RNPを解放する方法を検討することにした。ゼブラフィッシュの受精卵 (0 dpf) をクロロキン溶液に浸漬し、生残率を調べる実験を行ったところ、濃度は、0.5~1 mM 程度に設定すべきであるということがわかった。今後、RNPを取り込んでいる受精卵を0.5~1 mM の濃度のクロロキン溶液に浸漬し、RNPが胚側に移行してゲノム編集が起きるか確認する必要がある。また、現在使用しているRNPは、gRNAが蛍光標識されているが、Cas9の卵母細胞内および受精卵内での局在を正確に把握するため、Cas9自体を蛍光標識した組換えタンパク質(Cas9-GFP-Luc:Cas9とGFPとルシフェラーゼの融合タンパク質) を合成・精製した。今後Cas9-GFP-LucをIMOでゼブラフィッシュに導入し、卵母細胞内や受精卵内における局在を確認する必要がある。本年度の研究成果で、顕微注入を用いないゲノム編集の実現に近づいたと言える。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Fish Physiology and Biochemistry
巻: - 号: 4 ページ: 849-855
10.1007/s10695-021-00945-6
巻: 2020 号: 3 ページ: 1121-1130
10.1007/s10695-020-00775-y