研究課題
特別研究員奨励費
自動車材料や建築材料などとして社会を支える鉄鋼材料にとって、耐食性の向上は材料の信頼性・安全性と結びつく非常に重要な課題である。鉄鋼材料はミクロ・ナノレベルで複雑な金属組織を有しており、そのような金属組織は耐食性にも影響をおよぼすと考えられているが、その詳細は未解明である。今年度は、金属組織中の固溶炭素原子に着目して以下の二つの視点から研究を実施した。(1) マルテンサイト鋼に着目した研究:第一原理計算を実施することで、マルテンサイトの表面特性におよぼす固溶炭素の影響を解析した。具体的には、マルテンサイト鋼中の固溶炭素濃度が増加するほど、鋼の仕事関数が増加することを見出した。仕事関数は金属表面から電子を取り出すためのエネルギーとして定義されることから、この仕事関数の増加はマルテンサイトの優れた耐食性と関連があると考察される。(2) オーステナイト鋼に着目した研究:マルテンサイト鋼だけでなく、オーステナイト鋼についても固溶炭素がその耐食性におよぼす影響を解析した。具体的には、炭素濃度の異なる複数のオーステナイト鋼について、NaClを含有するホウ酸緩衝液中での腐食挙動を解析した。動電位アノード分極曲線を測定した結果、活性溶解による電流値は固溶炭素濃度の増加にともなって減少することが明らかとなった。固溶炭素は、マルテンサイト鋼の場合と同様に、オーステナイト鋼においてもその活性溶解反応を抑制する効果を有すると考えられる。上述のように、今年度は二つのアプローチから固溶炭素が鉄鋼材料の耐食性におよぼす影響を詳細に解析した。その結果、固溶炭素はマルテンサイト鋼およびオーステナイト鋼のどちらについても、耐食性を向上する効果を有することが見出された。また、今年度は研究成果に関して、国内学会にて口頭発表1件、国際学会にて口頭発表1件を実施したのに加え、筆頭著者論文1報を発表した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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