研究実績の概要 |
本研究の目的は,希薄気体中を運動する物体のダイナミクスを理解することである.理論を発展させるための基本問題として,BGKモデル(希薄気体流を記述するモデル方程式)に対する数値計算(T. Tsuji and K. Aoki, J. Comput. Phys., 2013)で観察された現象を,数学的に解明することを目指している. この数値計算では,1次元BGKモデルで表される流れの中を運動する振り子の長時間挙動が調べられている.昨年度,これと同じ設定で BGKモデルを圧縮性Navier-Stokes方程式に,振り子を自由に運動する質点に変えた場合に,質点と気体の長時間挙動を数学的に解明した.その際,Green関数を用いた解析が重要な役割を果たした(https://arxiv.org/abs/1904.00992). 本年度の研究では,この Green関数による解析法をさらに発展させ,種々の問題に応用した.これらの成果は未公表であるため,以下に一つ,概要を示すに留めることとしたい. 【1次元圧縮性粘性流体中を運動する振り子の長時間挙動】 昨年度の成果では上述のように,元の数値計算による研究とは少し設定を変え,振り子ではなく自由に運動する質点を考えた.本年度の研究によって,やはり Green関数を用いた解析で,振り子の長時間挙動も数学的に理解できるということが概ね分かった.気体-振り子と気体-自由質点の場合とでは,流体と物体の相互作用の性格(透過波と反射波の挙動)が大きく異なり,そのことが系の長時間挙動を変化させることが分かった.
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