研究課題
特別研究員奨励費
前年度までの研究により、銀河内部の星形成効率は希薄な分子ガスの割合と分子雲同士の衝突速度によって決まることが明らかになった。しかしながら、分子雲衝突に関する研究はシミュレーションに限られており、観測的な検証は行われていなかった。そこで、本年度は、NGC1300のこれまでの分子ガス観測データを基に、分子雲の衝突速度を観測的に調べた。分子雲の衝突速度を求めるために、銀河平面上での分子雲の運動を銀河の速度場データ(アーカイブデータより取得)と2018年度に作成した分子雲のカタログを使用した。そのうえで、今後衝突する可能性がある分子雲のペアを抽出し、その相対速度を衝突速度として求めた。その結果、腕部に比べて棒部と棒部と腕部の接続部(Bar-end)で衝突速度が大きいことがわかった。接続部は活発な星形成が起きていることから、この結果は衝突速度が大きい場合でも星形成が誘発される可能性があることを示している。最近の分子雲衝突のシミュレーション結果から、星形成が誘発するかどうかは、衝突速度だけではなく、衝突する分子雲の質量にも左右されることがわかってきた。すなわち、衝突速度が大きい場合、質量が大きければ星形成は誘発される。そして、NGC 1300においては、分子雲の質量は棒部に比べて接続部のほうが有意に大きいことがすでに2018年度の研究から明らかになっている。以上から、我々は棒部では質量の小さい分子雲が高速で衝突しているために星形成が誘発されていない可能性があると結論づけた。本成果は、近傍銀河において衝突速度と星形成の関係を初めて調べた研究であり、査読論文として出版された。3年間の研究から、我々はNGC1300の棒部で重い星の形成が見られない原因が、①希薄な分子ガスが大量にあること、②質量の小さい分子雲が高速で衝突していることの少なくとも2つが原因であると結論づけた。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
巻: 502 号: 2 ページ: 2238-2250
10.1093/mnras/stab130
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