研究課題/領域番号 |
18J20901
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
デザイン学
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
川崎 和也 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2020年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2020年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2019年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2018年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | ファッション / デザインリサーチ / バイオマテリアル / デジタルファブリケーション / コンピュテーショナルデザイン / サステナブルファッション / スペキュラティヴデザイン / 機械学習 |
研究実績の概要 |
当該研究員の本年度は、具体的な実装に向けた成果を示した1年だったと言える。研究内容については、年度始めに計画していた(1)衣服型紙の生成システムの開発と(2)新素材の開発の2点を実施することができた。その成果を以下のような形で積極的に発表することもできた。第一に実践においては、研究成果がスウェーデンに本社を置くアパレル大手企業・エイチ・アンド・エム ヘネス・アンド・マウリッツが運営するH&Mファウンデーション主催「グローバル・チェンジ・アワード」において特別賞を受賞した。日本からの受賞は初であり、約7000 件の応募から採択され、ニューヨークやスウェーデンにおいて受賞特別プログラムを受ける機会が与えられた。本研究は、当該財団の支援を受け、開発中の技術の社会的実装に向けて引き続き共同研究を実施していく。また、国際的なデザイン研究のウェブジャーナルである英国のDEZEEN主催 DEZEEN DESIGN AWARDも入選した。 さらに理論においては、本研究が依拠する「デザインリサーチ」と呼称される研究領域について、その歴史や文脈を整理し、多様な実践例とともにまとめた著書『SPECULATIONS 人間中心主義のデザインをこえて』をビー・エヌ・エヌ新社から刊行した。本書は、申請者自身による論文、作品解説、エッセイのみならず、早稲田大学文化構想学部准教授のドミニク・チェン氏や金沢21世紀美術館学芸員の高橋洋介氏、京都市立芸術大学専任講師の砂山太一氏の論考や、香港芸術学院のヤンキー・リー氏、MoMA 学芸員のパオラ・アントネッリ氏などに協力いただきインタビューを掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請者はこれまで、「文献調査」「実験的制作」「学術的成果発表」の観点から、これからの本研究の進捗を前に進めてきた。具体的には、文献調査を通して研究の理論的な背景を明らかにし、実験的制作を通して論文や試作などの学術的な成果物を制作した。それらを上述したような国内外の成果発表の機会において積極的に発表することで、本研究に必要な知見や人的資本を用意してきた。本年度は、上述の成果を博士論文としてまとめた上で本年度中に提出するべく、執筆に集中していく予定である。 申請者はこれまでも、国内外問わず様々な形で研究発表を行ってきた。例えば、2018年度の成果発表として、本年度11月に英国で開催された「グローバル・ファッション・カンファレンス」にて口頭発表と映像発表を実施した他、ファッションの学術誌『vanitas』に論文を投稿した。また、Wired Creative Hack Award、文化庁メディア芸術祭のアート部門審査委員会推薦作品において受賞した。
本研究は、広義には、深刻化する環境問題への対応策が急務であり、デジタルデザインツールの導入が期待される国内外のファッション産業に対して、具体的なデザイン方法論を提案することができた。また、デザイン学領域に対して、環境問題や情報技術を前提としたデザイン研究に寄与することができた。 狭義には、サステナブルファッション領域に対して、廃棄減少を目的とする具体的な方法論として、再現可能なデザインプロセスを提案することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、2010年以降、環境の持続可能性を志向する研究領域「サステナブルファッション」を前提として、当該領域において導入が期待されている機械学習を用いた廃棄減少のための衣服設計方法論を開発することを目的としている。具体的には、以下の2点について検討する。 (1)第一に、3DCADと機械学習を組み合わせた衣服設計ツールの開発を実施する。当開発では、三次元技術によるユーザーの身体寸法への最適化と廃棄の最小化を設計指針とする。(2)次に、機械学習技術と織り/編みという衣服設計のための基礎的な技術との接続を検討しつつ、衣服設計方法論を確立する。工法の観点から素材の廃棄を最小化することを目的とする。 次年度は、データ主導による衣服加工方法の開発に特化して研究を進行する。 (1)プログラミング言語pythonによって型紙の曲線部分を直線へと近似することて布帛形状に限りなく最適化し、廃棄排出を減少させる基礎プログラムを実装し、再現可能な衣服設計論を確立する。(2)並行して、三次元データや機械学習データを実際の衣服加工現場に応用するためのデザインプロセスを設計する。群馬・兵庫・東京の繊維工場と共同でデータ活用の実証実験として素材と衣服の制作を行う。 以上の研究方針によって、本研究で検討してきた衣服の(1)構造設計(2)意匠加工までの一連の包括的な設計方法論を、廃棄の減少という観点から実装・評価する。 本研究は、「デザイン学」と「工学」のクロスオーバーする領域に依拠しつつ研究を推進していく点において新規性を持ちうる。また、本研究の新規性を、国外問わず積極的に発表を実施することができる。
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