研究課題
特別研究員奨励費
1.これまでの研究を通して、「細胞膜に覆われた環境DNAはより大きなサイズ画分で検出されやすいと共に、 膜外からのDNA分解の影響を受けにくい」という仮説を立てた。この仮説を検証するために、異なる孔径サイズのフィルターで水槽水をろ過し、短鎖DNAに対する長鎖DNAの回収割合が孔径サイズ間でどのように変化するかを調べた。その結果、環境DNAの収量自体は小さな孔径サイズのフィルターの方が多い一方、短鎖環境DNAに対する長鎖環境DNAの回収割合は大きな孔径サイズのフィルターで高くなった。この結果は、上述の仮説を支持すると共に、特定のサイズおよび状態の環境DNAを選択的に回収することで、環境DNAから得られる情報を選別できる可能性を示唆した (Jo et al., 2020; Science of the Total Environment)。2.環境DNAの分解率を推定した先行研究に基づくメタ解析を行い、環境DNAの分子学的・細胞学的状態 (膜内/外、核/ミトコンドリア、DNA 断片長など) とその残存性の関係、そしてそれらに対する環境条件の影響を調べた。その結果、フィルター孔径サイズ、対象遺伝子、水温、水質の4要因間の交互作用が、環境DNAの分解率と特に関連していることが分かった。また、マアジ (Trachurus japonicus) の環境DNA粒子径サイズ分布の時間変化を調べた水槽実験を再解析した結果、メタ解析と概ね似たような傾向を示した。これらから、環境DNAの分解プロセスをより良く理解するためには、環境要因の影響だけでなく、環境DNAの状態学的な知見も非常に重要であることが示唆された (Jo & Minamoto, in press; Molecular Ecology Resources)。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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