令和2年度は前年度に引き続き経路最適化法のU(1)ゲージ理論への適用を進めた。プラケットを一つだけ含む作用を持つ系を用いて、ゲージ自由度が経路最適化法に及ぼす影響を調べた。この模型の自由度の数は4であるが、ゲージ自由度を先に積分することによって1以上4以下にまで下げることができる。このようにゲージ対称性を利用して自由度を減らすことをここではゲージ固定と呼ぶことにする。前年度の研究はゲージ固定を完全に行い、自由度の数を1にした場合に対応する。各自由度での符号問題の改善度合いを調べた結果、ゲージ固定を行わない場合平均位相因子は変化しないが、固定した場合は固定する自由度が増えることで値が大きくなりやすいことが分かった。 上記の方法では経路最適化法を適用する際の複素化の与え方として、ニューラルネットワークへの入力としてリンク変数を直接使っていた。そこでニューラルネットワークへの入力をリンク変数の積であるプラケットに変更した計算も行った。結果として、途中で一度下がってはいるが、ニューラルネットワークへの入力を変更することで符号問題が改善するようになることが明らかになった。上記2つの事実によって、ゲージ理論に経路最適化法を適用する際にはゲージ固定を行う、もしくはニューラルネットワークへの入力にゲージ不変量を用いることが重要であることが示唆される。 プラケットを入力とする方法はそのまま格子上のU(1)ゲージ理論に適用することができる。結合定数が純虚数の2×2の格子U(1)理論に適用した結果、適切に入力を選ぶことで格子U(1)理論の場合でも経路最適化法が機能することが明らかになった。また入力にリンク変数を直接使った場合、プラケットを一つだけ含む系の場合と同様に改善は見られなかった。
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