研究課題
特別研究員奨励費
これまでの動物実験から、生体内で確認された誘導心筋細胞が成熟した心筋細胞の特徴を有していることに着目し、当該年度においては生体組織環境が持つ心筋リプログラミングに対する促進作用について検討を行った。まず生体組織に近い柔らかさを持つ培養基材を検討したところ、一般的な培養で用いられるポリスチレン基材上に比べ、生体組織と同等レベルの柔らかさを持つハイドロゲル上でレトロウイルスベクターを用いた心筋リプログラミングにおける誘導効率が改善することが分かった。さらに生体組織に近似したハイドロゲル上においては、SeV-GMTによる心筋リプログラミング効率も改善し、拍動する心筋細胞の割合が上昇した。また、培養基材による心筋リプログラミングの促進に関わる分子機構を検討した結果、YAP/TAZ経路が関わっていることを明らかにした。以上より、Sev-GMTを用いた心筋リプログラミングに対し、組み込む因子の最適化あるいは併用する化合物を検討することで、心筋リプログラミング因子と組み合わせた安全かつ簡便であり、効率的な心臓再生技術の確立に向けた知見が得られた。一方、心筋リプログラミング法の臨床応用を考慮した際の課題が未だ残っており、具体的にはヒトへ投与する場合に因子配列・ベクターを最適化すること、SeV-GMTによって誘起されうる免疫反応をいかにして軽減するか、などの検討が今後考えられる。また、誘導心筋においても、その生理的機能の成熟度などが明らかになっていない部分があったため、電気生理学的な検討を行い解析を進める予定であったが、新型コロナウイルスの影響を受けて実験のセットアップを行うことが難しくなったため、当該年度ではデータを得ることができなかった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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