研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、乳がんの中でも唯一有用な標的分子が見出されていないサブタイプであるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)において、治療反応性と変動因子の網羅的解析を通じてTNBCにおける個別化医療の実現に向けた薬効予測バイオマーカーの確立を目指し、研究を推進している。当該年度は、昨年度に見出したAktおよび下流分子であるmTORの阻害がダサチニブ抵抗性を克服し得るという知見について、ダサチニブを高濃度かつ短期間曝露によって作成した抵抗性細胞モデル(MDA-MB-231T)を用いてその妥当性評価を実施した。まず、感受性細胞であるMDA-MB-231に高濃度かつ短期間ダサチニブを曝露し、作成したMDA-MB-231Tのダサチニブへの感受性を評価したところダサチニブに対して抵抗性を有していることを確認した。さらに、MDA-MB-231TにおいてAktの活性化が認められ、Akt/mTOR阻害がダサチニブに対する感受性を増加することを見出した。さらに、Aktの活性化を担う分子としてAktを負に制御する分子であるPTENに着目しその発現を評価したところ、MDA-MB-231Tにおいて発現低下が認められ、MDA-MB-231TにおけるAktの活性増加はPTENの発現低下によるものであることが示唆された。さらに、PTEN以外のバイオマーカーやダサチニブ抵抗性に係る分子を探索する目的で、RNA-seq解析による網羅的な遺伝子変動解析を実施した結果、MDA-MB-231と比較して、MDA-MB-231Tにおいて2倍以上増加している遺伝子、もしくは2倍以上減少している遺伝子が、それぞれ369遺伝子と172遺伝子認められた。将来的に、PTENや、変動が認められた遺伝子群について詳細に解析することで、ダサチニブ薬効予測バイオマーカーの確立に繋がると考えられる。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 533 号: 4 ページ: 672-678
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