研究課題
特別研究員奨励費
本年度は、一般次元のトロピカル多様体上の因子の階数と、因子に対応した線束の正則切断全体がなすトロピカル加群との関係を調べた。その結果を応用して、トロピカルトーリック曲面に対するリーマン・ロッホの不等式を得た。また新たな研究のアプローチの着想もいくつか得られた。因子の階数の定義は古典的な場合と異なっており、正則切断全体がなすトロピカル加群からはただちには計算ができないものになっている。因子の階数が計算できたトロピカルアーベル多様体に対する研究から着想を得て、正則切断全体がなすトロピカル加群の生成元を確認することでただちに計算できる二つの量を定義し、それらによって因子の階数が上下から挟まれることを示した。特にトロピカルトーリック多様体上の因子に対してはそれら二つの量は一致することを示し、それを用いて因子の階数を計算した。また、上記の研究とトロピカル因子の交点理論についての先行研究を合わせることで、結論としてリーマン・ロッホの不等式を得ることができた。この結果は論文として執筆中であり、ワークショップで発表するなどしている。上記及び前回の研究からトロピカルアーベル多様体とトロピカルトーリック多様体に対してリーマン・ロッホの不等式を得ることができたが、その結果はどちらも複素代数幾何で得られる結果と非常に適合するものになっている。これは複素代数幾何とトロピカル幾何の対応を観察する手掛かりの一つである。この対応を観察することで理論の一般化ができる期待があり、その研究のため代数多様体の崩壊理論について現在勉強中である。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Mathematische Zeitschrift
巻: 297 号: 3-4 ページ: 1329-1351
10.1007/s00209-020-02559-9