研究課題
特別研究員奨励費
本研究の目的は、材料学を駆使した、3次元細胞集合体内部における生存機能を可視化するイメージング技術の創出である。令和2年度は、前年度までに確立してきたモレキュラービーコン(MB)細胞内徐放システムを3次元細胞集合体へと応用し、その内部における細胞死(アポトーシス)を可視化することを試みた。MBは、細胞内で様々な生物機能を制御するmRNAを検出する核酸イメージングプローブである。生体吸収性高分子であるゼラチンからなるナノ粒子にMBを内包させ、ゼラチンの分解とともにMBを細胞内で徐放する(=MB細胞内徐放)ことで、細胞内mRNAを特異的かつ長期的に検出可能である。細胞の生存機能を可視化するため、アポトーシス細胞特異的に発現するカスパーゼ-3のmRNAに対するMBを用い、これを内包するゼラチンナノ粒子を作製した。このナノ粒子を2次元培養においてマウス間葉系幹細胞に取り込ませ、細胞をMBにより標識した。続いて、MB標識細胞から3次元細胞凝集体を形成させることにより、その内部まで均一に標識された細胞凝集体を構築することが可能となった。この細胞凝集体に対して、分子サイズの異なる2種類の薬剤によってアポトーシスを誘導した。比較的大きな分子サイズをもつ抗Fas抗体(Fas Ab)は、凝集体表面に多く分布していた一方で、低分子薬剤であるカンプトテシンは凝集体内部まで浸透することができる。その結果、Fas Abによるアポトーシス誘導では、凝集体表面の細胞においてMBの蛍光強度が増加し、Fas Abの分布とよい相関を示した。これに対して、カンプトテシンによるアポトーシス誘導では、凝集体表面だけでなく、凝集体内部の細胞からも強い蛍光が検出された。このように、MB標識細胞から3次元細胞集合体を構築し、その内部における生存機能(アポトーシス細胞の空間的分布)を可視化する技術を開発することができた。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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