研究実績の概要 |
本研究では、比較的未開拓な層状ペロブスカイトやアンチペロブスカイトに対して、第一原理計算により構造歪みを見出すことによって、面内歪下の新規物性や新物質の探索を目的としてきた。網羅的な構造歪探索を行うための手法開発、計算実行、結果解析を経て、様々な構造歪を見出し、それによる興味深い物性変化が理論予測された:八面体の呼吸歪によって生じるパイエルス転移型のLa3Ni2O7の面内歪下の金属絶縁体転移や、"強誘電体的"金属(ポーラーメタル)へのMgCNi3の面内歪下の構造相転移、八面体回転歪によって強誘電体相転移が生じる弱強誘電体Li2SrNb2O7、八面体回転歪によってバンドギャップが大きく変化するアンチペロブスカイト半導体M3XN(M=Mg, Ca, Sr, Ba; X=P, As, Sb, Bi)が挙げられる。 特に、実験グループとの連携を行うことで、層状ペロブスカイトLi2SrNb2O7(LSNO)について、(i)Ta添加によって量子常誘電体になり、(ii)Ca添加によって強誘電性が増強されること、(iii)プロパー強誘電体の機構(2次的ヤーンテラー効果)とインプロパー強誘電体の機構(ブリュアンゾーン境界ソフトフォノン)を併せ持つことを突き止めた。更に、アンチペロブスカイトM3XNにおいて、八面体回転歪により、マーデルングエネルギーが減少し、結晶系が安定化する機構を見出し、相安定性や八面体回転歪振幅がトレランスファクターにより記述できること、それらのバンドギャップや有効質量、電子構造の起源を見出した。地球上に豊富に存在する元素で構成される、合成未報告のMg3PN, Sr3PNにおいて直接バンドギャップが2.35, 1.74 eVで、その吸光係数がGaAs, CdTeに匹敵し、緑色・赤色の光吸収発光体への応用可能性を理論検討した。
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