研究実績の概要 |
自然界に偏在する集団運動系において、生物・非生物に依存しない普遍的な法則を探究することが本研究の目的であった。上の目的のために私たちは自己駆動する非対称コロイド粒子であるヤヌス粒子を用いた集団運動の実験を進めた。 私たちは、半面がチタンでコーティングされたシリカ粒子(ヤヌス粒子)が交流電場のもとで大域的秩序をなすことを前年度までに確認していた。特に、polar order parameter の振る舞いを測った結果、ヤヌス粒子による大域的秩序が真の長距離秩序を示していることがわかった。コロイド粒子を含む、人工の自己駆動粒子系で真の長距離秩序が観察されたのは私たちの系が世界で初めてである。また私たちはこの大域的秩序相において、粒子数揺らぎが Gauss 的なゆらぎよりも大きなゆらぎ (Giant Number Fluctuation (GNF)) や、向きゆらぎ相関のべき的な減衰、密度波を実験的に測定した。面白いことに GNF の指数は Toner, Tu による理論的な予測と近い指数を示した一方で、向きゆらぎや密度波は理論とは違い、等方的なゆらぎが観察された。Toner, Tu らのくりこみ群を用いた理論的予測とは異なる結果が得られたものの、定性的には最近の Mahault らの Vicsek model を用いた数値計算(Mahault, Phys.Rev.Lett 2019)と近い結果が得られた。これらの興味深い結果は論文にまとめ(Iwasawa, Nishiguchi and Sano, arXiv:2011.14548)、現在投稿中である。 上の研究以外に、進化実験により得られた薬剤耐性大腸菌の遺伝子型/表現型データを解析することで、進化の拘束条件を求める研究を行った (Maeda, Iwasawa et al, Nat. Comm. 2020)。
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