ファイバ内における光双極子ポテンシャルの均一性を,空間分解分光によって評価するという新しい手法を確立した.この手法は今後のファイバ内原子干渉計実現に向けた重要な要素技術となる。この手法を援用し,中空コアファイバ内の光双極子ポテンシャルが不均一であることが分かった。これは,中空コアファイバ内で原子干渉計を実現するための課題を明らかにしたという点で大きな意味のある成果である。中空コアファイバ内部の光導波路の不均一性の解決策として,リング型光共振器を用いることに可能性を見出した。本実験のためには,冷却原子を生成するための冷却用光源及び,真空装置が必要であり,その真空装置の中で長距離に及ぶ光導波路を構成し,導波路中の原子の内部状態を観測することが求められる。このような実験を実現するために,立体角の大きな長方形型の真空窓や長距離での磁場の均一性を確保した装置を設計し,装置の立ち上げを行なった。立ち上げた装置を用い,冷却原子の生成実験を行なった。一度に多数の原子を捕獲できるという長距離光導波路の長所を活かすために,光導波路に連続的に原子を注入できる新しい冷却機構の開発に取り組んだ。原子内の多数遷移を駆使した原子冷却を設計することで,これまで間欠的にしか生成することができなかった極低温原子集団を,連続的に生成することに成功した。完全に連続動作させるためには,準安定状態の磁気光学トラップが必須であることを明らかにした上,光周波数コムを用いて安定化された光源の立ち上げを行った。このように,冷却原子の生成実験まで完了させることができ,原子干渉計実験に使用できる見通しを得たという点では,ある程度進展していると言える。
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