研究実績の概要 |
本研究では、医療用超音波デバイスや超音波探傷用探触子のような強力超音波デバイスにおいて、大振幅励振においても高性能な入出力特性を維持可能な圧電デバイスの開発と、強力超音波応用分野における環境に配慮した非鉛系圧電材料の実用化を目指し、圧電材料のハイパワー特性の定量的評価方法の考案とその応用を目的としている。 本年度は、これまで圧電非線形振動のモデル化で考慮してきた3次弾性振動に加えて、より大振幅の圧電振動の際に問題となる5次非線形振動を取り入れたモデル化を行うと共に、ハイパワー特性に優れる非鉛圧電材料を用いて作製した超音波モータの高トルク化のために、設計改良に取り組んだ。昨年度までに、独自考案した圧電ハイパワー特性の定量的評価方法を用いて、3次弾性定数絶対値が小さくハイパワー特性に優れた非鉛圧電材料である、チタン酸ビスマスナトリウム―チタン酸バリウム(Bi,Na)TiO3-BaTiO3 [BNBT]の積層振動子を用いて、小型超音波モータを製作し、実デバイスでの特性評価を行ってきた。しかし、非対称形状でありノード点を支持できていない点、積層振動子に予圧をかけられない構造になっている点、摩擦力によって直動変位を回転力に変換する弾性フィンのアラインメントが接着によりばらつきスムーズな回転が得られない点が問題であった。そこで本年度は、積層振動子を金属部材で挟み込みボルト締結によって予圧をかけ、弾性フィンをロータ側に配置してアラインメントを改善し、対称形状としてノード点を支持できる構造とした。この結果、予圧0.5 N,印加電圧90 Vppで418 rpmの高速な回転が得られた。これにより、ハイパワー特性に優れる非鉛圧電材料を選択することで、強力超音波デバイスの実現が可能になることが示された。
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